2026年4月10日金曜日

Variational Quantum Algorithmによる幾何学的最適化

 量子コンピューティングによって、「アメーバ」のような形の閉曲線に内接する正五角形を見つけ出そう!(→英語版はこちらです。

🟠閉曲線の内接正五角形を探す
 どんな単純閉曲線の上にも、正方形の4頂点となる点の組が存在することが(一部の例外を除いて)、すでに証明されています。これは内接正方形問題として知られています。では、正方形ではなく、正五角形(およびそれ以上の角数の正多角形)は必ず存在するのか?実は、それは未だ数学的に明らかにされていないようです。ここでは、量子コンピューティングの手法によって、具体的にそのような5角形を探します。もちろん、数学的証明ではなく、数値的に一定の誤差の範囲内でそれを求めます。

🟠変分量子アルゴリズム(VQA)の応用
 今回は、量子・古典ハイブリッドアルゴリズムであるVQA (Variational Quantum Algorithm)を採用します。概要は以下のとおりです。

・Ansatz (量子回路): 
 5つの頂点を表す変数(その値は、曲線を一周する 0〜2π)を、量子回路の回転ゲート(Ryなど)のパラメータとします。
・コスト関数 (古典側): 
 5辺の長さが等しいこと(隣接する点間の距離の分散を最小化)と、5本の対角線の長さが等しいこと(対角線距離の分散を最小化)を表現します。
・最適化: 
 量子回路側からの勾配を要求しない、古典オプティマイザ(COBYLA等)を用いて、量子回路の期待値が最小(正五角形にできるだけ近づくよう)になるようパラメータを更新します。
・実装:
 Qiskit 2.xの Sampler を使い、量子回路の状態を座標に直接対応させ、Ansatzにより、5つの量子ビットの回転角θiを、曲線上のパラメータ tiとみなします。そして、古典側で、Samplerでの実測から、期待値の近似値、すなわち、得られた準位(状態)から現在の幾何学的配置を評価します。

 VQA以外に、QAOAという方法もあります。QAOAの方は曲線上の点を離散化して、そのうちの最適な5点の組み合わせを求めるのに対して、今回のVQAは「連続的な探索」に特徴があります。さらに詳しいことは、別記事で書きたいと思います。

🟠VQAの動作の可視化
 最初に、下図のアニメーションをご覧ください。閉曲線がアメーバのように動き回る中で、VQAは正五角形を追い続けている様子が分かります。これを眺めていると、量子アルゴリズムは、化学計算や金融最適化だけでなく、こうした純粋幾何学の探索においても強力なツールとなるように思えます。
 さらに、閉曲線を一つ固定して、VQAがどのように正五角形を探索しているかを見ることにします。以下のアニメーションがその一例です。
🟠VQAが求めてた正五角形の精度
 以下の図に、VQAで求めた、正三角形、正方形、正五角形の精度を示します。角数が増えると、次第に高精度を求めることが難しくなって行きます。それでも、右端の正五角形の場合、かなり高い精度になっています。具体的には、5つの辺の長さの平均値=1.096、標準偏差=0.00016でした。また、5つの対角線の長さについても、平均値=1.773、標準偏差=0.00043です。

🟠量子コンピュータ実機を使う場合
 今回は、Qiskitによるシミュレータでの実行でした。実機でもやってみたいのですが、無料ユーザ(Open Plan)はsession機能を使えないので、上記のような量子/古典ハイブリッドジョブをそのまま投入することができません。そのため、かなりの部分をシミュレータで実行して、それを利用して、最後の1回か2回程度の評価をジョブとして実機に投入する、などの工夫が必要になります。この件も、後日報告したいと思います。

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