🟢4-qubit(a,b,c,d)の2種類の純粋状態について考える
以下の2つの場合について考察する。① もつれのない純粋状態と、② 完全にもつれた純粋状態、である。
① 量子もつれのない純粋状態
各 qubit が独立な状態として、例えば次の状態を考える。 $$ |\psi\rangle = |0\rangle_a \otimes |1\rangle_b \otimes |0\rangle_c \otimes |1\rangle_d $$ 全体密度行列は、 $$\rho_{abcd} = |\psi\rangle \langle \psi| $$である。 この状態は積状態(product state)であり、qubit a は他の qubit と全くもつれていない。
部分トレースを行う。システムbcd(aを除いた)をトレースアウトすると、$$\rho_a = \mathrm{Tr}_{bcd}(\rho) $$ この結果、部分系 a の密度行列は以下の通りとなる。 $$\rho_a = |0\rangle \langle 0| $$ 行列表現では以下のようになる。 $$\rho_a = \begin{pmatrix}1 & 0 \\ 0 & 0\end{pmatrix} $$ 純粋状態か混合状態かを調べる。純粋状態である条件は以下の通りである: $$\rho_a^2 = \rho_a $$ 実際に計算してみると、 $$ \begin{pmatrix}1 & 0 \\ 0 & 0\end{pmatrix}^2=\begin{pmatrix}1 & 0 \\ 0 & 0\end{pmatrix} $$ したがって、部分系 a は純粋状態である。
② 完全にもつれた純粋状態
以下の4 qubit の GHZ 状態を考える。これは、4 qubit全体で完全にもつれた純粋状態である。 $$ |\psi\rangle = \frac{1}{\sqrt{2}}\left(|0000\rangle + |1111\rangle\right) $$
全体系の密度行列は以下の通りとなる。 $$\rho_{abcd} = |\psi\rangle \langle \psi| $$ これを展開すると以下のようになる。 $$ \rho_{abcd} = $$ $$ \frac{1}{2}\Big(|0000\rangle\langle0000| + |0000\rangle\langle1111| + |1111\rangle\langle0000| + |1111\rangle\langle1111|\Big) $$ ここで、bcdを部分トレースし、以下のようにaに関する部分密度行列を計算する。 $$\rho_a = \mathrm{Tr}_{bcd}(\rho_{abcd}) $$ この部分トレースを行うと以下の交差項は消える。 $$ |0000\rangle\langle1111|, |1111\rangle\langle0000|$$ その結果、aに関する部分密度行列は以下のようになる。 $$\rho_a = \frac{1}{2}\left(|0\rangle\langle0| + |1\rangle\langle1|\right) $$ 行列表現は以下のようになる: $$\rho_a = \frac{1}{2}\begin{pmatrix}1 & 0 \\ 0 & 1\end{pmatrix} $$ 純粋状態か混合状態かであるが、この部分密度行列については、以下のように、純粋状態の条件を満たさない。すなわち、 $$ \rho_a^2 = \left(\frac{1}{2}\begin{pmatrix}1 & 0 \\ 0 & 1\end{pmatrix}\right)^2 = \frac{1}{4}\begin{pmatrix}1 & 0 \\ 0 & 1\end{pmatrix} \neq \rho_a $$ したがって、部分系 a は混合状態である。
🟢結論
量子もつれのない積状態では部分系も純粋状態となる。一方、完全にもつれた純粋状態では、全体系は純粋状態であっても、部分系は混合状態となる。これは量子もつれの本質的特徴の一つであり、「全体系の情報は完全でも、部分系だけを見ると統計的混合に見える」という現象を示している。これは興味深いことである。
🟢補足
上に述べた、全体の密度行列を、トレースアウトして、部分密度行列を算出する手順は省略したが、実はこの計算は、テンソル積、外積、内積が絡み合っているので戸惑った。しかし、以下の公式を思い出すことによって、計算することができた。特に、最後の公式は見逃しやすく、とても重要と思うので掲載しておきたい。
$$ \begin{align} (A\otimes B)(|x\rangle\otimes|y\rangle)=(A|x\rangle)\otimes(B|y\rangle)\\ (\langle a|\otimes\langle b|)(|c\rangle\otimes|d\rangle)=\langle a|c\rangle\langle b|d\rangle \\ (|a\rangle\langle c|)\otimes(|b\rangle\langle d|)=|ab\rangle\langle cd|\\ \sum_i |i\rangle\langle i|=I\\ {}_{\mathbf{Y}}\langle \psi|(|a\rangle_\mathbf{X}\otimes |b\rangle_\mathbf{Y})=|a\rangle_\mathbf{X} \,{}_{\mathbf{Y}}\langle \psi |b\rangle_\mathbf{Y}\\ \end{align} $$ 最後の公式は、部分系Yに属するブラは、その部分系Yのケットにだけ作用することを意味する。また、以下のようにみなすと、最後の公式は、上から2番目の公式の特別の場合であることが分かる。 $$ {}_{\mathbf{Y}}\langle \psi| =I_\mathbf{X}\otimes {}_{\mathbf{Y}}\langle \psi| $$