2023年5月11日木曜日

量子コンピューティングEXPO(2023春)に参加

【要旨】 5/10-12に東京ビックサイトで開催された、量子コンピューティングEXPO(2023春)に参加した。これ以外に、AI・人工知能EXPO、ブロックチェーンEXPO、デジタル人材育成支援EXPOも同時開催されたこともあり、非常に多くの参加者が見られた。本記事では、「量子コンピューティング」についてのみ、簡単に報告する。

量子ゲート型 vs 量子アニーリング型について
 量子ゲート型に関しては、IBMが1121量子ビットの「IBM Quantum Condor」を発表すると宣言している。また国内では理研から国産初の64量子ビットコンピュータが既に公開された。それでもなお、まだまだ、真の実用化に向けた課題は山積しており、実用問題での確実な成果を見通せる段階ではない。今回のEXPOでもそういう雰囲気があった。一方、量子アニーリング型の方は、各メーカが大学等と共同研究で、実用的な最適化問題(物流、金融、配置、等々)で成果を上げている潮流を感じた。

大関真之 東北大学教授の量子アニーリングに関する講演
 講演タイトルは、「ビジネススケールに対峙する量子コンピューティング技術」であった。聴衆は恐らく1,000名を超え、"満員御礼"となっていた。彼は、元々、量子アニーリングの創始者である西森秀稔東工大教授のグループで研究した人であり、東北大学へ行ってからは、スタートアップ企業(株)シグマアイを起こした。それだけに、ほとんど、量子アニーリング技術の実世界への適用と今後の見通しであった。現時点では、実用的には、"量子コンピュータ" は、"量子アニーリング型" なのかも知れない。

 (株)高速、という企業の倉庫内の物品(主にトレー)配置最適化への取組みが印象的であった。スーパー等で必要なトレーの種類は多彩である。用途(肉、魚、野菜等々)、大小、形状、デザイン等々で異なる。倉庫には膨大な個数がストックされており、注文に応じてピッキングするのだが、種別の配置が大きな問題である。定常的に数多く出荷されるもの、何種類かがペアで出荷されるもの等があるので、倉庫内にどのように配置すればピッキング効率が上がるか、という問題である。

 この問題は、原理的にはペアの組み合わせ他を考慮すると実に17!(=3兆)個に上るという。もちろん、現場の作業員が長年の経験から、ある程度良い配置をすで行っているのだが、それは数値化されていないし、最適解にどれだけ近いかも分からない。そこに、量子アニーリングの出番がきた。泥臭い地道な検討に多くに時間をかけたが、結論から言うと、現状の配置に対して、人員や作業時間などのトータルコストで、10%の改善を達成できたという。10%と言う数値は素人には小さいな値のように見えるが、大量の物品を日常的に扱う大規模倉庫業においては、非常に価値のある効果なのである。

 一般的に言って、実用的な数理最適化問題においては、古典コンピュータ上での王者とも言えるGurobiに、大規模問題では負ける傾向があった。しかし、ごく最近の取り組み(量子アニーリングと古典数理アルゴリズムの組み合わせ)によって、大規模問題でもGurobiに勝つ見通しを得たという。それは、非常に多くの制約条件の変換を含む、シグマアイのOpt Operationという方式のようである。

(株)長大のクオンタムシティ構想
 量子技術で都市全体を最適化する、社会を変える、という構想を展示していた。量子技術によるエレルギーや交通などの分野別の最適化だけでなく、分野横断的な最適化を行い都市全体の最適化を目指す。現在の具体的なターゲットしては、配送車、配送ドローンなどの運用最適化であり、そこに、量子アニーリングによる最適化技術を組み入れる。もちろん、官公庁、物流企業、量子コンピュータメーカとの連携体制を強調していた。

北川勝浩教授(大阪大学)が語る量子コンピュータが導く未来
 これは、会場で配布された「量子ICTフォーラム通信 No.4, 2023」に掲載されているものである。一般には出回っていないので、これを入手できただけでも、このEXPOに参加した価値があった。特集「量子コンピュータが導く2050年の未来 - 誤りのない量子コンピュータで地球規模の課題に根本的な解決策を」として、北川教授が深い思いを語っておられる。
 これを読むと、「量子コンピュータは古典コンピュータよりもどれだけ高速なのか」とか、「日本の量子コンピュータ技術は、IBMやGoolgeに大きく遅れをとっているのではないか」という言い方は、愚問とまでは言えないが、ほとんどナンセンスだと思うようになる。大きな構想を持って、しっかりとした目標を据え、着実に進めていくという腰を据えた取組みこそが価値のあるのだ、そう思うようになる。
 具体的な(ゲート型)量子コンピュータの方式は、まだ誰も、これだと決められる状況ではない。したがって、超伝導方式、イオントラップ方式、光量子方式、半導体方式、中性原子方式の5つを並行して進めている。そうすることで、また別の新たな方式が浮かび上がるかも知れない。東大、日立製作所、大阪大学、日電、理研、慶應大学などがそれぞれを鋭意研究開発している。新進気鋭の研究者たちを励まし、互いに助け合いながら切磋琢磨できるフィールド作りを非常に重視している。こうした北川教授の語りに感銘を受けた。

感 想
 私の興味は、現時点では、量子アニーリングよりも量子ゲート型に向かっている。しかし、現実的な組み合わせ最適化問題を解く場合は、量子アニーリングをもっと研究し活用すべきだと感じる。
 ゲート型の量子コンピュータについて言えば、今後生き残るハードウェア方式は変わるかも知れないが、量子コンピューティングの数学モデルは量子原理そのものに基づいているので、普遍的なものだと思う。なので、今、その基礎を学ぶのは必然だろう。
 古典コンピュータで非常に性能良くできていることはそのままで良い。そうではない、未解決の、新しい問題に対処するために量子コンピュータがある。だんだん、そういう思いが強くなってきた。そこには、全く新しい世界がある。だから興味が持てる。
 次に予定されているイベントで、私が参加したいと思っているのは、Q2B23 Tokyo(2023年7月)である。多分参加する。

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[蛇足] ChatGPTは感想文は書けない
私:上記の文章を読んだあなたの感想を書いて下さい。要約ではなく。
ChatGPT: 申し訳ありませんが、私は感情を持つことができない機械学習モデルです。私は人間の言語処理を支援するために設計されており、専門的な知識や情報の提供をすることができますが、感情を持つことはできません。

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