2022年11月28日月曜日

超高密度符号化と量子テレポーテーション(その1)

【要旨】超高密度符号化と量子テレポーションに関して、Prof. Chris Bernhardt著[1]第7章をどのように学んだかをメモしておきたい。安易にツールや可視化に頼らずに、紙と鉛筆だけを用いて考えながら取り組むことに徹してきた。そして、今や機は熟した。ツール等で知識を確認する段階に達した。こういう手順を踏む方が「分かった喜び」が大きいことを実感した。本報(その1)では、幾つかの基本量子回路の作用を量子シミュレータQni[2]を利用しながら確認した。

単一量子ビットに対するXゲートとHゲートの適用
 量子ゲートのうち、単一量子ビットに作用させるPauli X(NOT)ゲートとHadamard(アダマール)ゲートは特に重要だ。図1に示すとおり、これらの作用を量子シミュレータQniで確認した。Xゲートは、量子状態ベクトルをX軸を回転中心としてπだけ回転させる。また、Hゲートは、X軸とZ軸間のπ/4の傾きの軸を中心としてπだけ回転させる。これらによる量子状態ベクトルの確率振幅θと位相φの変化を確認できる。Hゲートの作用として、|0〉と|1〉との重ね合わせ状態(superposition)が作られることが極めて重要である。
 図中に、自作の透明ブロッホ球を示しているが、これを手に取りながら、シミュレータの結果を確認できたのはとても良かったと思う。

2つの量子ビットの状態における量子ゲートの作用
 2つの量子ビットの場合、それがなす状態(2つの状態ベクトルのテンソル積)は、4つのケットベクトル |00〉、|01〉、|10〉、|11〉 の線形結合で表わされる。図2に、2番目の量子ビットq1にのみHゲートを作用させた結果を示した。この場合は、共に (1/√2 = 0.707) の2乗の確率(0.5)で |00〉、または |10〉 となることが確認できた。

Bell回路とReverse Bell回路
 次に、本報の続編で述べる「超高密度符号化」と「量子テレポーション」で必要となるBell回路とその逆作用となるReverse Bell回路を示す。図3に示すとおり、Bell回路は2つの量子ビットのち最初の量子ビットにまずHゲートを作用させ、続けて2番目の量子ビットにCNOT(制御付きNOT)を作用させるものだ。結果として、両量子ビットは「もつれた状態(Entangled)」となることが重要な点である。そして、両量子ビットの状態は、それぞれ50%の確率で |00〉 または |11〉 となる。これ以外の状態にはならない。すなわち、両量子ビットに相関関係が生じていることが分かる。
 この状態にさらにReverse Bell回路を作用させたのが図4である。Bell回路は自分自身が可逆回路である。従って、入力される2量子が4つの状態のいずれであっても、最終的に最初の状態に戻っている。図4には、Bell回路を作用させた後(Entangledの状態)と、さらにReverse Bell回路を作用させた後の状態(Unentangledの状態)を示しているので、このことが確認できるであろう。(なお、回路の適用結果では、量子ビットの並び順が最初の量子状態での量子ビット並びと逆順になっている。)
References
[1] Chris Bernhardt, “Quantum Computing for Everyone”, MIT Press, 2020 
https://www.chrisbernhardt.info/
[2] Qni; https://github.com/qniapp/qni

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