2020年9月10日木曜日

50年を越えて復刻されたある数学入門書

 人は、年をとるにつれて、感傷的に青春時代を思い起こすことがあります。今回の記事もそのような類いですが、それでもかなり抑制気味に書いていますのでご容赦下さい!?

    大学入学後間もなく、夢中になって読んだ(勉強した)数学書のひとつに「赤攝也著:集合論入門、培風館刊」があります。180ページほどの小冊子ではありますが、はしがきに「本書は、現代の数学的標準にてらしても、ほとんど杜撰な点を含まないものとなったと信じている」と書かれていたことに心が惹かれました。確かに、一歩一歩丁寧に精緻な叙述になっていますが、最後の方はかなり難解になっていました。すなわち、「整数と実数の濃度は異なる」ことに関する理論を経て、最後は、圧巻の「整列可能定理」と「ツォルンの補題(付録)」で終わっています。小生の手元にある本書には、「1967年8月31日読了」とメモ書きが残っていました。実に、今から53年前のことです!

    なぜ、今回この記事を書いたのかと言いますと、最近になってこの書が「文庫本」として復刻されているのを偶然知ったからです。普通のポピュラーな文庫本ではありません。「ちくま学芸文庫」という、筑摩書房による学術部門文庫判レーベルの一つです。これは名著の証ですね。さらに驚いたことに、著者の赤攝也先生ご自身が、「文庫化に際して」という文章を巻頭に寄せておられることです。すなわち、原本(培風館)の初版は1957年で、文庫本は2014年出版ですから、57年も経過しているのです。素晴らしいことだと思います。

    この50年を越える時の流れを振り返り、以下に新旧の本の写真を載せたいと思います。

(赤攝也先生は、他にも多数の数学の名著を書かれており、そのいくつかは同様にこの文庫で復刻されています。誠に残念ながら、先生は、昨年(2019年)お亡くなりになっていたことが分かりました。ご冥福をお祈り致します。)

赤攝也先生著「集合論入門」ちくま学芸文庫(2014)、培風館(1957)
初版本の中味(|V. 整列可能定理のところ)

現代の技術書と共に置かれた50年以上前の数学入門書(復刻版)


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