2025年7月19日土曜日

量子風鈴?で涼しさを

 猛暑に風鈴はいいものだ。ただし、チリンチリンと、時に耳障りになることもある。そこで、音は出ないが、量子ビットの不思議な世界を想起させる「量子風鈴」なるものを私の研究部屋に吊るしてみた。

熊本城天守閣から吊り下げられたかのような量子風鈴

「量子風鈴」のある研究室風景
 熊本城のカレンダーの前に、透明プラスチック球体が3個吊るされている。これらの球体については何度かこのブログの記事にしてきたので詳細は略します。中央とその下にある2個はBloch Sphereであり、単一量子ビットの状態とそれに対する基本的な量子論理ゲートを射影演算子で表現している。一番上の球体は、4量子ビットのもつれた状態をQ-Sphereで可視化している。

 扇風機の風に乗ってゆらつらするので、少しは涼しげな気分になる。だが実は、それ以上に、量子コンピューティングの世界を探求して行く意欲を持続させるための"おまじない"でもある!

生成AIの判断が、人間の感覚に近かった一つの例

 Webに掲載されたある記事のタイトルが以下のようになっていました。
 (句読点や文章中の空白は原文のままです。)

住宅地でヒグマ駆除、ハンターがライフル銃で 死者出た北海道福島町
 このタイトルを読んだ人は、撃たれたのはヒグマなのか、人間なのか、直ぐにわかるでしょうか?私の第一印象は、「おやっ、何かおかしなタイトルだなあ」ということでした。そこで、生成AIにも判断してもらいました。結論として、現代の生成AIは、(少なくとも本例に関しては)人間の感覚と近いところに来ているということでした。

🟢[生成AI - a]の回答
 非常に曖昧で、文を読んだだけでは「誰が撃たれて死亡したのか」が明確に伝わりません。「ヒグマ駆除」という言葉から、「ヒグマが撃たれた」とは読み取れます。しかし「死者出た」という語句が続くため、人間の死者が出たのか、ヒグマのことを指しているのかが不明瞭です。特に「ヒグマ駆除」と「死者出た」が同列で並べられているため、「駆除の過程で人が撃たれて死亡した可能性」まで想起させてしまいます。

🟢[生成AI - b]の回答
 このタイトルだけでは、撃たれたのがヒグマなのか、人なのかは分かりません。「死者出た北海道福島町」という部分が、撃たれた結果亡くなったのがヒグマなのか、あるいは別の要因で人が亡くなったのか(例えば、ヒグマに襲われて亡くなった、または駆除作業中に事故で亡くなったなど)が不明瞭だからです。文脈として「ヒグマ駆除」とあるので、ヒグマが死んだことは示唆されますが、「死者出た」が誰を指すのかが明確でないため、このタイトルだけでは判断できません。記事本文を読む必要があります。

2025年7月16日水曜日

稲作について生成AIに聞いてみた

 お米の値段、流通が話題になっています。近所を散歩していて、すっかり少なくなった水田ですが、まだ7月中旬だというのに、写真の通り、水田に水が全く無い!ひび割れしているじゃないですか!これじゃ不作になって、米の値段がさらに高騰するのではないか?

「中干し」でひび割れした水田(厚木市 2025-7-15)

 違いました!これは、梅雨明け前後に行われる、稲の生育を調整する手法で「中干し」と呼ばれるものでした。水を一時的に抜くことで、田んぼの表面を乾かし、酸素を取り込める様にして根の健全な発達を促す効果があるとのこと。田んぼをひび割れさせることで、土中に溜まった有害なメタンガスなどを排出させる、また、病害虫を防ぐ効果もある。水をなくすことで、稲に適度なストレスを与えて、育成を調整することにもなるらしい。

 いつ頃からこのような手法が取られていたのか?生成AIからの回答によれば、江戸時代中期にはすでに行われていた。つまり、水の管理の基本として、灌漑と排水が行われていた。17世紀末に書かれた「農業全書」(宮崎安貞著)には、「中干し」を指すと思われる以下の叙述があるという:

「分げつ過多の稲は倒れやすし、時に水を抜きてこれを止むるべし」

🟢感想
 私は、普段、量子コンピューティングやPythonプログラム開発に生成AIを使っている。だが、今回の様な調べ物にも、とても有用だと分かる。時代は変わってきた。今後はさらに、AIエージェントが、人に変わって勝手に?調べ物もしてくれるらしい。昨日、ソフトバンクからその事業化の発表もあった。小学生の夏の自由研究なども様変わりするだろう。ああ!

2025年7月4日金曜日

IBM Quantum Composer - 惜しまれてsunset

----重大な修正------- Composerはsunsetではなかった!2025-07-08 JST確認したところ、New Platformへ移行した後も、Composerは従来通りOpen Planで利用できることが分かった!(ただし、ファイルはローカルに保存するように変更された。それをアップロードすることはできる。)こちらのポストが参考になる。これは力強い!
--------------------------

(元記事はこのままにしておきます。)

【要旨】
量子コンピューティング教育上の優れたプラットフォームIBM Quantum Classic Platformが、2025年7月1日をもって終了(sunset)となった。数ヶ月前から予告があり、完全に new platformへ移行した。小生も準備済みだったので特に問題はないのだが、こんな素晴らしい開発環境、特にその中のComposer(作曲家)という機能を惜しんで、以下に記録しておきたい。

🟢IBM Quantum Platformからの通知(2025-07-01)
 下図の通りである。量子コンピュータハードウェア開発競争の激化が背後にあるようだ。初心者向けの環境から、よりプロフェッショナルな利用のサポートにシフトしたように思われる。ともかく、このPlatformでのOpen Plan(無償)はもはや使えないことが分かる。私は、2年間ほど愛用してきた。図にある通り、これまでに865件のジョブを投入した。小さな量子回路ではあるが(基本的な量子アルゴリズムである、BB84、Ekrt、Grover、Superdense Coding、Teleportation、Simon、Phase Kickback、Phase Estimation, QFT等々)を探求した。その利用経験から得られた知見は、現在とても役立っている!!!その後の、Quantum Machine Learningへの取り組みにも繋がった。大いに感謝したい。
IBM Quantum Classic Platformのサービス終了

🟢量子コンピューティングの全ての操作を一括提供のComposer
 このClassic Platformにおいて、特に使いやすく有用であったComposer機能を振り返り、記憶に留めたい。ログインすると、その場で、以下の項目を一気に実施することができたのである!

(1)ビジュアルに量子回路を編集し、シミュレートする
(2)その量子回路の状態の表示(Q-Sphere、Probability、StateVector)
(3)OpenQSAM(手動量子回路編集)との連携
(4)IBM Quantumマシン実機での実行と結果の取得

量子回路の編集と量子状態表示(Q-Sphere, Probability, StateVector)
OpenQASM(右側)との連携

🟢新しいプラットフォーム(IBM Quantum New Platform)
 新しいプラットフォームでは、上記の様なWebサービスは終了となった。それらと同等のことは、各自がローカルにQiskit環境を設定して行うことになった。しかし、(詳細は略すが)新しい様々な機能が新たに使えるようになった。特に、これまでOpen Planでは使えなかった新鋭の実機 ibm_torino(Heronプロセッサ)が利用可能となったことは大きい!