最終的に、このようなデザインのスマホアプリを作成しました。これを各自のスマホにインストールしてもらう。利用者間のデータのやりとりは完全自動化!
■社会的ジレンマの簡単な例と実験
社会的ジレンマとは、山岸俊雄氏(北大名誉教授)の著書[1][2]によれば、「互いに協力し合えば皆が利益を得られるのに、各自が自分の利益だけを考えて行動すると誰もが不利益を被る状況」ということです。これに関する研究(考察や実験)は古くから行われています。ここでは、これらの著書にある有名な実験の再現を試みます。但し、以下は、小生の理解にもとづく説明です。
- 互いに見知らぬ学生4名(ひと組当たり)が参加。実験中も、互いに接触せず。
- 参加者は以下の仕組みを完全に理解している。
- 各自に最初100円が与えられる。このうちからd円を寄付できる。
- 寄付者の所持金は、その時、(100 - d)円になる。
- その寄付金d円を基に、寄付者以外の各々に(2d/3)円が与えられる。
各自の寄付行動は、その人の持つ「対人信頼尺度」が大きく影響する。すなわち、「他の人は寄付すると思えるかどうか、すなわち、他人を信頼する程度」により、自分の寄付行動が決まることを実験で確かめた。この実験参加者には、この信頼尺度が高い人と低い人が混じっている。(この尺度は、別途用意したアンケート5項目の回答得点による。)
実験結果では、各回で与えられる100円に対して、参加者は平均44円を寄付した。そして、信頼尺度の高い人は平均55円を、信頼尺度の低い人は平均33円を寄付したという。なるほど。いずれにしても、「他の人がどのくらい寄付するか分からないので、自分の寄付はこの程度にしておこう」という意識がかなり働くようです。
■社会的ジレンマ実験用スマホアプリ
これ以降は、スマホアプリのお話しになります。
上記の金額計算自体は簡単ですが、スムーズに実験を進めるにはアプリが欲しい。参考文献[1]では、PCを使ったとありますが、詳細は不明です。ここでは、各自がスマホでこの実験を行うためのアプリを作成しました。互いに接触なしに進めるには、各自のスマホを使うのが望ましいと考えました。これを4人(4台のスマホ)で実行した例を以下に示します。図1は開始時であり、それぞれの学生がいくら寄付するかを決めています。図2はそれらの寄付を反映させた第1ラウンドの結果です。
■スマホアプリの造り- CloudDB(リアルタイムデータベース)の利用
このスマホアプリの特徴は、図2に示したとおり、明示的な通信も管理者の介入も無しに、各人の寄付が他の人の収入に直ちに反映できることです。それは、MIT App InventorにあるCloudDB(リアルタイムDB)を利用することで簡単に実現できました。主要部は以下の図のみです。図3は、寄付金額を寄付者IDとともにCloudDBへ格納します。格納があると、リアルタイムに自動的に、各スマホのアプリの図4のブロックが呼び出されて、寄付金額から付与金額が計算され、配分されます。
このように、リアルタイムDBのおかげで、プログラムはとても簡潔になりました。
(注)デフォルトでは、誰でも直ぐに使える、CloudDB用の共通のidとトークンが与えられています。しかし、自分のデータがいつまで存続するか保証されません。そこで、独自のidとトークンを申請することもできます。無料枠の容量は小さいですが、これを利用すれば、安定的であり重宝します。
参考文献
[1] 山岸俊男:安心社会から信頼社会へ 日本型システムの行方 (中公新書)、1996年6月発行(ただし、今回はこのKindle版で講読した)
[2] 山岸俊男:社会的ジレンマ 「環境破壊」から「いじめ」まで (PHP新書)、2000年7月発行
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