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2023年7月12日水曜日

Continuously measure quantum states with different orthonormal bases

Quantum entanglement plays an important role in Bell's theorem and the quantum key distribution protocol Ekert. But there is one more important thing. It is to successively measure the quantum state with different orthonormal bases. Both Fig.1 and Fig.2 give information about it, but isn't the graphical Fig.1 clearer than the mathematical representation of Fig.2?
Suppose we apply the following replacement rules:
|0> ⇒ 0,  |1> ⇒ 1
The probability that the measurement result by the current Basis becomes |0> can be get by the function below. This function is equivalent to Fig.1.


2023年4月28日金曜日

"Quantum Computing for Everyone" 再訪1-測定と基底

[要旨]数ヶ月前に、"Quantum Computing for Everyone" by Prof. Chris Bernhardtを、最後まで読み終えた。だが、そのままにしておくと記憶が薄れてしまうので、再度最初から学び直し、頭に定着させることにした。前回見落としていたこと、新たに分かったことも出てきた。名著であることを再認識している。本記事では、(量子もつれの前段の)電子のスピン、光子の偏光、量子ビット、順序付き正規直交基底、重ね合わせ、測定の考え方等を、独自のイラスト中心にまとめて復習とした。(続編も書く予定である。)

その後[補足1][補足2]][補足3]説明を追加した。2023-05-01

Quantum Clock
 これは、全くヘンテコな時計だ。見ることも、何時かを聞くこともできない。できるのは、例えば、"12時ですか?”のように問うことだけである。その答えは、"はい、12時です"、または、"いいえ、6時です”のいずれかになる。Fig.1で簡単に説明する。"12時ですか?”の答えが来た後に、再度同じ質問をすれば、全く同じ答えが返ってくる。すなわち、2回とも、"はい、12時です"、となるか又は2回とも、"いいえ、6時です”のいずれかとなる。だが、2回目の質問を、"3時ですか?”に変えると、その答えは、"はい、3時です"、か又は、"いいえ、9時です”のいずれかになる。
 この量子時計なるもの、何かの役に立つのか?Yesなのである。この後に示す「電子のスピン」や「光子の偏光」を測定する場合と全く同じなのである。すなわち、"XX時ですか?" は、量子をXX方向で測定することに相当するのである。

電子のスピンの測定(measuring spin of electrons)
 古典ビットには、"測定"という概念はない。だが、量子ビット(qubit)は、測定することによってはじめてその値が決まる。有名なStern-Gerlachの実験を模倣した、電子のspinの測定イメージをFig.2に示す。測定装置(apparatus)の向きが重要であることを示したものだ。
 この状況を説明する数学モデルをFig.3に示す。図は連続して計測するケースだが、その向きが異なる場合を説明している。測定器の向きとそれに対応する順序付き正規直交基底(ordered othonormal bases)の関係は、量子コンピューティングのおける最も重要な基本事項の一つであろう。

光子の偏光の測定(measuring polarization of photons)
 光子の偏光を測定する場合、上記のStern-Gerlachでの磁石を用いた測定器に相当するのが偏光板(polarizing filter)である。特に注目に値するのは、Fig.4の(b)の2枚の偏光板(0°と90°の)の場合よりも、(c)の3枚偏光板の方がより多くの光を通すことだ。通常のフィルタの常識とは逆の結果なのである。
 Fig.4の状況も、Fig.5に示す数学モデルで明快になるのである。この場合も、偏光板(Polarizer)の向きに対応する順序付き正規直交基底で説明できる。


補足1(偏光板の軸の傾きと順序付き正規直交基底)
 例えば蛍光灯からは、毎秒10の20乗個の光子(光の最小単位)が放出される。光子ひとつづつが、それぞれランダムな方向に波打って進む。その波の傾きが、偏光板(フィルタ)の軸の傾きと一致すれば、その光子は偏光板を確実に通過する。一方、両者の傾きが直交する場合は、光子は通過できず確実に吸収される。では、それ以外の傾きの光子はどうなるのか?それを説明するのが、上記Fig.5なのである。偏光板の軸の傾きに対応した、順序付き正規直交基底(以後、単に基底と呼ぶ)は以下のようになる。その導出計算はここでは略す。
 基底の1番目のケットベクトルは偏光板の軸の傾きに対応し、2番目のケットベクトルは偏光板の軸に垂直な傾きに対応する。偏光板に向かってくる光子は、これら2つのケットベクトルの線形結合になっていると考える。そして、偏光板で見る(光子を計測する)時、光子が偏光板を通過する確率は、1番目のケットベクトルの係数の2乗となる。通過しない確率は2番目のケットベクトルの係数の2乗となる。これら2つの確率の和は1.0となる。これが要点である。

 例えば、Fig.4とFig.5の(c)のケースでは、1枚目の偏光板を通過した光子は全て、基底Aの1番目のケットベクトルになっている。それを2枚目の偏光板で測定する場合には、光子は基底Bの2つのケットベクトルの線形結合となる。したがって、基底Bでの測定で光子が通過する確率は、1番目のケットベクトルの係数の2乗、すなわち、0.5になる。3枚目の偏光板についても同様である。結論として、1枚目の偏光板を通過した光子が3枚目まで通過する確率は0.5x0.5=0.25となる。したがって、(c)の図のようにある程度の明るさでものが見えるのである。

補足2(追加実験)
 最後に、念のためFig.6に示す追加実験を行った。つまり、Fig.4 (c)の実験で使った3番目の偏光板の向きを、2番目と同じく45度に揃えた。すると、順序付き正規直交基底が2番目と3番目の偏光板とで同一になる。そのため、1番目の偏光板を通過した光子の半数が2番目の偏光板を通過し、それらの光子が全て3番目の偏光板をそのまま通過したのである。その結果、(d)に示す通り、(c)の場合よりも明るく見えることが確認できた。

補足3(過去のブログ記事)
 本件に関しては、過去に同様の記事(こちら)を書いた。武田俊太郎氏の解説に基づいたものである。今回の記事は、数学的にやや厳密になっている。

 さらなる詳細は、Prof. Bernhardtの書をご覧いただきたい。緻密でわかりやすい叙述のおかげで、一定の持続力があれば、上記3件の"測定"を十分に理解できるはずである。なお、Fig.1〜Fig.6は本書には掲載されていない。いずれも、小生の理解を明確にするために自作したものである。