2026年11月6日金曜日

異色の量子コンピューティング書籍2冊

 最近は、量子コンピューティング分野でも、生成AIに全部書かせたか、生成AIで調べた内容を単に羅列したような粗雑な書籍も自費出版されている。買ってみてがっかり、という経験もした。そこで、なるべく名の通った大手出版社/大学出版局や、信頼できそうな著者の書籍を買うようにしている。

 しかし、以下に示す2冊は、自費出版のような書籍で、著者もはっきりしないが(ただし、左側の書籍は、著者"あさひ"とだけ記載されている)、内容はしっかりしていて安心した。一見、一般向けの啓蒙書のように見える。確かに、数式はほとんど使っていないが、幅広い観点で、かなり深い考察や精緻な叙述で貫かれている。大いに参考になると思われるので、ここに簡単に紹介したい。いずれもAmazon等で、2,000円前後で購入できる。紙版とKindle版がある。

 2つとも、AIを活用して書かれているようにも見えるが(本当かどうかは分からないが)、著者によって十分にコントロールされているので、私にとっては問題なく読める。

🟢量子コンピューティング 実践ロードマップ(上図左側)
 技術専門書ではないが、量子コンピューティングの現状と今後の見通しを、かなり深い洞察を持って叙述している。過度な期待を持たせずに、しかし、今後の可能性について丁寧に導く。そして、古典コンピュータとの決定的な違いは、「量子ビット、量子重ね合わせ、量子もつれ、そして干渉」にあることを、具体的に説いている。

 私が特に感心したのは、「測定とノイズ」「誤り訂正とスケーリング」についても、かなりのページ数を割いて議論している。ハードウェア製造の難しさも良く伝わってくる。誤り訂正では、Surface code(表面符号)関係についても、短いが的確に要点を示していることは素晴らしいと感じる。

 安直な啓蒙書ではなく、かと言って、数式は全く出てこないが、技術色が美しく漂う本書は一般の技術者にとっても、あるいは、量子コンピューティングの専門家にとっても有用だと感じる。読みやすい。

🟢Pythonで動かし古典と比べる 量子AI(上図右側)
 こちらには、著者名が明記されていないが、上記の書籍と非常に似た語り口なので、おそらく同じ著者ではないかと思われる。表紙だけ見ると、一般向啓蒙書、あるいは、量子と名をうったハウツー書に見えるが、全く違う!確かに、たくさんの短いPythonプログラムが打ち込んで、なんとか動かすように見えたが、そうではなく、それよりも「考え方」に何倍も多く説明を費やしている。

 特徴は、変分量子回路、量子カーネルという、先端的事項を扱うのだが、古典との比較や、なぜこの範囲では性能面で量子的手法が古典手法に勝てないのかも説明していることだ。だが、それでも量子技術を学ぶ必要性も忘れていない。また、要所要所に「ここで詰まる」という節があり、進めなく困った時に、それをどう捉えて、どのように進めるかを重視している点も新鮮だ。

 表示にもある通り、PC1台とPythonの動く環境があれば、例題の全てを動かすことができる。NumPyで量子ビットを作ることから始まり、機械学習関係にはsklearn、量子ゲートを利用するためにPennyLaneといったライブラリを利用している。PCでのシミュレーションに徹しているのだが、量子コンピュータ実機で動かす場合の考察も忘れていないので、次のステップへ行く際の参考なる点も多い。量子の規模を拡大した場合の課題やノイズによる誤り訂正にも簡潔だが明快に触れている。学生、技術者、量子コンピューティング経験者にも有用と思われる。

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