2026年6月17日水曜日

IBM Quantumの上級認定資格を取得(3個目)

 量子コンピューティングを探求するにあたって、理論的バックグラウンドが不足していると感じる場面が時々出てくるので、基礎を見直すことにした。その一つのテーマが「量子状態の密度行列」である。これに関する詳細なチュートリアルがIBM Quantumのwebサイトにある。"General Formulation of Quantum Information" (量子情報の一般的定式化)である。今回、そのチュートリアルを学んだ後に、認定資格(Advanced)試験を受けて合格し、認定バッチと認定証を得た。

密度行列を使う動機は以下のようなことである。

(1)従来の量子状態ベクトルよりも幅広い種類の量子状態を表現できる。これには、ノイズの影響を受ける量子系の状態や、量子状態の古典的な確率によるランダムな選択の状態も含まれる。

(2)無視したい別の系と量子もつれにある系の状態など、孤立した系の状態の記述は、従来の量子状態ベクトルでは簡単にできないが、密度行列によればそれは明快になる。

(3)古典情報と量子情報を単一の数学的枠組みで記述できる。このことから、古典情報は本質的に量子情報の特別なケースであることが見えてくる。

 このチュートリアルは、このような動機を支える理論を詳しく展開しており、若干難しい内容になっている。Qiskitコードでプログラミングしたり、量子ゲートを使って量子コンピュータ実機で動かす、などの「息抜き」もできないので、尚更である。しかし、これまで知らなかった知識を得たり、曖昧だった考え方が明確になるなど、得られたものはとても大きいと感じた。

 でも、ビジュアルにして楽しめる事項もあった。その一つを以下の図に示す。量子コンピューティングでは、量子状態はブロッホ球の表面に示される「純粋状態」の他に、ブロッホ球の内部の点に対応する「混合状態」がある。そこに密度行列が登場する。

 もう一例ある。これまでの基本的な測定は、正規直交系から決まる射影測定が使われたが、より一般的な測定もある。それは、SIC-POVM(Symmetric Informationally Complete Positive Operator-Valued Measure)と呼ばるれる。下図は1-qubitにおけるSIC-POVMに対応するものである。詳細は別として、正4面体(regular tetrahedron)が、Bloch球に内接しているのが美しい。4つの頂点は、ブロッホ球面の純粋状態を表している。化学でのメタン分子の4つの水素原子も、これと同じ正4面体の頂点に配置されている。
【補足】上に述べた通り、このチュートリアルは少し(or かなり)難しい。そこで、下記の西村治道教授の書籍[1]の3.4(混合状態)、3.5(POVM)、3.6(発展的な概念)を一通り学んだ後に取り組めば、ぐんと理解が進むのではないかと思われる。
{1] 西村治道、"基礎から学ぶ量子計算"、オーム社、2022年11月.

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