2018年11月3日土曜日

MATLAB EXPO 2018Japan参加レポート

開催日:2018-10-30(火)、開催場所:グランドニッコー東京 台場
 MathWorks Japanとしては、今年は10回目の開催。公式サイト:下記に概要があるが、参加者限定で講演スライド(各50枚程度)も開示された。
 http://www.matlabexpo.com/jp/index.html


展示会場、講演会場とも超満員!

 基調講演3件、一般講演28件(7並列)、ポスター11件、企業展示20社、MathWorks社14ブース、その他に、Lightning Talksなど。MathWorks社1社のイベントなのに、予想をはるかに超える参加者に圧倒された。AI技術とその応用への関心の高さと期待の大きさを改めて感じた。参加者数、内容の充実度等は、お台場の豪華ホテルでの開催に相応しいものであった。主にMATLAB/Simulinkを利用したAIのユーザの活用事例とMathWorks社からの解説的な講演。ユーザーの適用例では、MathWorks社のコンサルトを受けているか、共同開発しているものいくつかあった。当社は、AIに不慣れだが何とか活用したいという企業からのニーズに応えている。
 
 講演は企業が多かったが、大学の研究室の成果も発表できるだろう。ポスター11件のうち、9件は大学であった。AI応用関係に強い関心を持つ技術者等のこれだけの人の前での発表はインパクトがある。色々見聞きしたが、帰り際には、「統計学が最強の学問である」(著者:西内啓)が頭をよぎった。AIも結局のところ統計学に根ざしているのか。来年度は、同じこのホテルで、2019-5-28に開催される。Call for Presentationも配布された。

小生が最も感じ入った発表を2つほど示します。

●大林組技術研:ディープラーニングを活用した山岳トンネルの岩盤評価
 トンネル掘りに何種類かあるが、ここでは、岩盤が堅く、何種かの岩石が混在して掘削が難しい「山岳トンネル」を掘って行く過程での、岩盤の状況判断にAIを活用する試みが発表された。現場の作業員のこれまでの経験や勘だけに頼らず、地質専門家の判断と同程度のAI判断を使い、現場担当者の判断を支援したい。AIで全部置き換えるつもりではやっていない。現場で経験した切羽の画像はそれほど多くはないので、教師付きディープラーニングをスクラッチからやるのは難しい。そこで、やや古典的とはなっているがAlexNetを使い、そこで学習された実績(学習済みモデル)を使う。転移学習である。

 また、AlexNetは分類結果(切羽の5段階評価結果)まで出せるが、ここでは、主に分類判定の精度を高めるため、分類フェーズをAlexNetからカットして、従来からの機械学習で実績のあるSVM(サポートベクタマシン)で行った。試行結果は思いのほか良好だったので、驚いたとのこと。4評価項目で各五段階評価の結果を得た。例えば、「割目状態:5分類評価」では、89%の的中率を得た。今後はさらに、進行していく掘削の切羽の状況を時系列的に評価する手法も取り入れたい。(LSTMとは言わなかったが、そのような物を念頭に置いているのかも。)

 この試行結果から、実用化の方向へ向かう気にさせられた。しかし、Deep Learningでやっている中味が説明できないので、不安な面があるとのこと。各コンボリューションで本当に何を判断しているのかがもっと分かる手段を得たい。色はどうも見ていないようだ。そうではなく、模様らしい。などと述べていた。
 以上のような、土木の現場でもDeep Learningが適用されつつあることに、新鮮みを感じた。

●JAXA:3日でできるディープラーニング~宇宙機の自撮り画像評価~
 このポスターは注目された。Lightning Talksでも話された。ユーモアもあって、まさにLightning Talkにふさわしく、技術的にも高く評価できると思う。宇宙機が自撮りした画像を地球へ送ってくるわけだが、宇宙での通信量やエネルギーの制約から、極めて限られたデータしか送信できない状況がある。そんな時に、失敗した自撮り画像をたくさん送られてきても非常に困る。そこで、ディープラーニングで、あたかも人間がそこにいて判断したかのような、特選画像を送ってくるような状況にしたい。

 そのために、月と「はやぶさ」の模型を作って1万枚の自撮り画像(学習用画像)を試行的に作った様子が、Ligtning Talksでユーモアを織り交ぜて説明され、会場の笑いを誘った。しかし、きちんと、「3日で、MATLABを使って、Deep Learningで結果を出した」ことが高く評価されたようだ。私も、このポスターに1票投じた。(最優秀ポスターの投票が来場者により行われた。)


ユーモアを交えたLightning Talkの様子

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