🔴例題Tiny Mermin-Peres Magic
この例題の説明はここ示した。Fig.1に示す通り、AliceとBobはそれぞれ2量子ビットを保有している。両者の量子ビット対は、前半で量子もつれの状態 ǀψ1⟩となる。それ以降は両者のインタラクションは無い。それにもかかわらず、最終状態 ǀψ2⟩を測定すると、(後でFig.2やFig.3に示すように)両者に強い相関が見られる。すなわち、両者の測定結果の古典2ビット列に含まれる"1"の個数は、必ずどちらかは偶数個であり、他方は奇数個になる。いわば逆向きの強い相関である。
🔴自作量子回路シミュレータによる確認
この例題の動作を、自作の量子回路シミュレータで確認した結果をFig.2に示す。起こり得る基底状態の確率と位相が円盤に表示される。また、確率振幅、確率、位相の数値リストも表示されている。 例えば、量子状態 ǀψ1⟩では、Aliceがǀ00⟩ならばBobは必ずǀ11⟩となる。最終状態 ǀψ2⟩では、例えば、Aliceがǀ00⟩ならばBobはǀ01⟩か又はǀ10⟩となり、上述した測定古典ビットでの"1"の個数が偶数か奇数も確認できる。すなわち、この円盤表示から、両者の量子もつれの状況を掴むことができる。
🔴パウリ相関による量子もつれの強さの表示
量子もつれ状態をさらに詳しく調べる方法の一つはパウリ相関測定である。これは、例えば、量子状態 ǀψ⟩をZ軸測定した場合の期待値が以下のように計算されることに基づく。⟨ZZ⟩ = ⟨ψǀ Z⊗Z ǀψ⟩
一例として、ǀψ⟩ = (ǀ00⟩+ǀ11⟩)/√2というベル状態の場合は、計算してみると、⟨ZZ⟩ =1となる。これは2つの量子ビットのZ測定結果が確実に同じ方向になる相関を意味する。一方、ǀψ⟩= ǀ01⟩という単なるテンソル積ならば、⟨ZZ⟩ = -1となり、逆向きの強い相関を示すが、量子もつれではない。
Fig.4では、Z測定に加えて、X測定とY測定も行なっている。上記のような各パウリ測定は、相関を計算できるが、必ずしも「量子もつれ」を完全に反映したものではない。そのため、場合によっては、Z測定以外の測定を行うことがある。
Fig.4の横軸のZZ(q2,q3) は、Bobの量子ビット状態に対する⟨ZZ⟩ であり、縦軸のZZ(q0,q1) は、Aliceの量子ビット状態に対する⟨ZZ⟩ である。そして、その交点に示された正方形の色は、それらの値(期待値)の積を表現している。濃い赤色ほど+1に近い。
状態 ǀψ1⟩においては、Aliceの2量子ビットのZ測定結果が同一方向ならば、Bobの2量子ビットのZ測定結果も同一方向となる。あるいは、AliceとBobのZ測定結果は、ともに異なる方向となる。そのような強い相関が、⟨XX⟩ と⟨YY⟩ でも観測されるので、両者は完全なもつれ状態にあると言える。
一方、状態 ǀψ2⟩では、2量子ビットのZ測定結果は、AliceとBobのどちらかでは同じ方向となり、他方では異なる方向となる。したがって、Fig.4の右側の図の正方形は濃い青色(期待値の積は-1)になることは納得できる。
🔴IBM Quantum コンピュータ実機での測定結果
最後に、IBM Quantum実機での測定結果をFig.5に示す。最新鋭機の一つibm_torino(Heron r1)で、10,000 ショット実行した結果である。量子状態 ǀψ1⟩と ǀψ2⟩での測定とも、若干のエラー(ノイズによると思われる)が生じているが、Fig.2、Fig.3、Fig.4で示した計算結果をよく裏付ける結果となっている。量子コンピュータが、ここまで進歩してきたことに改めて驚く次第である!
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