【要旨】古典的手法では見つけられなかった(or できなかった)ことが、量子的手法では可能になったという事例があれば勇気付けられる。その一つとして、量子計算を用いたQSVC(Quantum Support Vector Classifier)が、古典SVCよりも高い精度で分類できる一つの例を示す。この例に対しては、古典SVCでは見つからなかった、新たな分類決定境界が、量子QSVCで見つけられたと言える。これは、量子機械学習に取り組む上で意義がある事例と思われる。
🔴対象としたデータセットGaussian-Parity
今回用いたデータセットGaussian-Parityの一例を図1に示す。右側の表は、その内容である。2つの特徴量(Feature1、Feature2)とラベル(0 or 1)で構成される300サンプルが含まれる。これをMiniMax(0〜π)スケーリングして散布図にしたものが左側の図である。ラベル0とラベル1のデータが、斜めに交差して分布しているので、境界線を引くのは難しそうに見える。
🔴古典的SVCによるクラス分け
このデータセットに対して、まず、古典SVCでクラス分けした。300サンプルの7割を訓練用として学習させた結果を、残り3割のサンプルをテスト用として評価した分類の精度は81%であった。学習結果を反映した分類の決定境界を図2に示した。かなりよく分類できていると思われる。SVCの威力が感じられた。(SVCに与える種々のパラメータの値で結果は変動するが。)
次に、量子的QSVCでクラス分けした。今回は、Qiskitに装備されているライブラリQSVCを量子回路シミュレーションで実行した。学習の条件はSVCの場合と同じである。分類精度は、90%となり、SVCの場合よりもかなり高まった。それは、図3に示す通り、図2とは異なる決定境界が得られたことによる。このように、SVCでは見つからなかった新たな決定境界が得られた理由は、(技術詳細は略すが)少ない量子ビットnでも、2のn乗次元の広い量子状態の空間を探索できることによるのであろう。すなわち、多様なカーネル行列と呼ばれる情報を古典的なSVCの仕組みに与えることができる。
🔴古典的SVCと量子的QSVCとの関係
詳細は、別のブログ記事で後日議論したいが、図4に両者の関係の概要を示した。Javier Mancilla M.氏の著書"QML Unlocked"が非常に参考になったので、その中のFigure 16を引用し、加筆した。(この書籍のレビュー結果の記事も別途書く予定である。)
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