【要旨】量子もつれを用いた例題Mermin-Peres-Magicを、IBM量子コンピュータ新鋭機ibm_torino (Heron r1プロセッサ)で実行させた結果、ノイズ等によるエラーの発生率が、以前のibm_brisbane (Eagle r3プロセッサ)に比べて、ほぼ半減することが分かった。これにより、所望の正解が得られる成功率は、86%から92%に大きく改善された。今後出現するであろう華々しい成果は、このような長年の地道な研究開発によるものなのだと実感できた気がする。
🔴誤り低減を目指す量子コンピュータの進展
Eagle(鷲)は攻撃的で強く、Heron(鷺)はしなやかで強いというイメージがあるという。IBMがそれを念頭において量子コンピュータに命名したのかは定かではない。IBMはこれまで、無償で量子プロセッサEagle r3(マシン名 ibm_kyiv, ibm_brisbane)を提供してきたが、この3月から、新鋭機Heron r1(マシン名 ibm_torino)を追加した。Heronは、Eaglelよりも、大幅にエラー発生率が低減されて強力になったという。そのハードウェアの仕組みは私には分からないが、最大の難題の一つであるエラー低減に向けて着実に進展していることが窺える。
🔴量子コンピューティングプラットフォームQiskitの更新
IBMは量子コンピューティング開発環境Qiskitを頻繁にバージョンアップしているが、今回、Heronプロセッサの無償公開に合わせて、さらに大幅な改訂を行なった。そのための移行説明会もオンラインで行われた。実際、これまでの量子プログラムは環境を色々と修正しないと動かない状況である。だが、そこを何とか調べて、Heronプロセッサもようやく使えるようになった!!!
🔴量子もつれの例題「Mermin-Peres-Magic」をHeronプロセッサで動かす
このHeronプロセッサの性能を十分に発揮できるような量子アプリを見つけることは容易ではない。しかし、自分がやれるアプリを少しづつ動かして、自分のスキルを高めることができるだろう。そういう思いで、量子もつれが本質的に効いている「Mermin-Peres-Magic」をやってみた。それがどんな問題かは、過去に書いた
こちらの記事をご覧いただきたい。
ごく簡単に言えば、この問題に対しては、古典的には100%成功する方法は無いが、量子的方法(量子もつれ)では、必ず100%成功させることができる。ただし、実際の量子コンピュータでは、ノイズ等による誤り発生のため、失敗するケースも出てくる。
🔴Heronプロセッサではエラー発生が着実に低減されていた!
詳しいことは省略するが、図1をご覧いただきたい。この例題を実行した場合のエラーの発生率が、Eagleプロセッサに対して、約半減されることが分かった。すなわち、本来の得たい正解を得る場合の失敗率は、14.0%から7.9%に大幅に低減されたのである。これによって、正解を得る成功率は、86%から92%に上昇した。私自身の、しかも一つの例題の実測結果に過ぎないのだが、これによってモチベーションは確実に高まった!こうして、技術は進歩するものなのだと。
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