2022年7月31日日曜日

夏休みにもう少し本格的に量子コンピュータを学ぶ

 この記事は、これから「量子コンピュータ」を学ぼうとしている人に、何らかの参考にして戴けるかもしれないと思って書いています。

 私には夏休みはない。すでに退職しているからだ。しかし、世の中の夏休みと言われる期間に、学生諸君と同じように、少し纏まった何かに取り組んでみたい。私の場合、それは「量子コンピュータ」と決めた。量子力学の素養はほとんど無いのだが、(何十年も前に)大学で数学を学び、その後、民間企業の研究所と大学においてコンピュータソフトウェアを相手にしてきた経験は、何らかの力を与えてくれそうではある。

 ともかく、量子の振る舞いは、我々の日常の経験からはまるで外れている。どの本にもそう書いてある。だから頭を柔くして、取り組んで行かねばならぬ。その意識を持ち続けるため、それを象徴するちょっとしたマスコット(イメージキャラクタ)を机上に置きたい。しかし、適当なものが見つからないので、図1のように自作した。ブロッホ球上に、(量子コンピュータにおいて最も肝心な)量子ビットの重ね合わせ状態をイメージしたものだ。そして、その支柱には、シュレーディンガーの波動方程式をとりあえず(写経の如く)書いてみた。一見、こけしに似ているがまるで違う。

 では、具体的にどのように学ぼうとするのか。まず、情報収集だ。図2に示した書籍、雑誌9冊を取り揃えた。私の本の読み方だが、まず、どれか1冊に着手して、できるだけ概要を掴むことを目指す。だが、どこかで進まなくなる。説明に飛躍を感じたり、式の変形について行けなくなったりする。その場合は、あまりそれに固執せずに、別の書籍で関連事項を調べたりする。場合によっては、元の本を一旦諦めて、新しいそちらの本に乗り換えて進めることもある。すなわち、数冊の本を行ったり来たりしながら、概念を把握し、奥行きを窺うように努める。一定の所まで行けたら、改めて、どれか一冊を最初から丁寧に、要点をノートに書き出しながら読み進める。

 物理学者ではない一般的な研究者、技術者が、量子コンピュータを利用するには、どの程度、量子力学の知識が必要なのか。その境界は自明ではなく(また、時代と共に変遷するだろうが)、ともかく、量子力学の基本概念や、特有の計算方法(量子ビット、量子ゲート、量子回路)の基本は押さえておく必要があるだろう。

 私は今年(2022年)の春ごろから量子コンピューティングに入門したのだが、最初に雑誌インタフェース誌の大特集記事で学んだ。これは、理論はともかく、まず、実際に量子コンピューティングをPythonでやって見るというのが主体だ。これによって、私の中では(特に量子アニーリングが)かなり進んだ。一般的には、基礎から順々に積み上げて学ぶのが王道ではある。しかし、まず体験し、それで得られたものを増幅させるため、改めて概念を見直し、基本事項を詳しく再確認するというやり方も悪くはないのではなかろうか。

 理論や技術よりも、むしろどのような考え方なのかを説いている書籍、は多くの人々にとって有用だ。村上憲郎著「クオンタム思考」は、「量子コンピュータを理解するための量子力学超入門」の入門にもなっている。西森秀稔他著「量子コンピュータが人工知能を加速する」は、特に、量子アニーリングのための優れたイントロダクションだ。小林雅一著「ゼロからわかる量子コンピュータ」は、開発の経緯や業界の最新技術動向も非常に詳しい。

  図2の9冊の中では、「量子コンピュータを理解するための量子力学超入門」と、渡辺靖志著「入門講義量子コンピュータ」を読むことが今回の目標である。ともに、シュレーディンガー方程式も易しめに扱い、量子ビットの操作や計算法も丁寧だ。しかしながら、実は、それよりもさらに平易な、湊雄一郎著「いちばんやさしい量子コンピューターの教本」や宇津木健著「絵で見てわかる量子コンピュータの仕組み」も気になる。

 実際、宇津木健著は、なかなか優れた本だ。タイトルに「絵で見てわかる」とあるので、表層的な大衆向け解説本かと思われたが、全然違う。数式は確かに使っていないのだが、量子コンピュータの基本要素が平易に、しかも詳しく説明されており、だいぶ深い所まで行けそうな感がある。さらに素晴らしいと思ったのは、この書籍を買った人には、「絵と数式でわかる」という付録のpdf("数式"が追加されていることに注目)が提供されることだ。この20ページほどのpdfには、ディラックのブラケット記法、重ね合わせ状態、ブロッホ球、測定確率、複数量子ビット(テンソル積)、量子ゲート、量子もつれ状態の射影測定、等々が、数式で簡潔に説明されている。書籍本体の説明において(平易さゆえに)精密さに欠けた部分を良く補っているのである。いきなり数式が出てくるのとは逆であり、理解が深まる。この書籍はぜひ、完読したいものだ。

 一般的な言い方では(異論もあるが)、量子コンピュータには、ゲート型とアニーリング型がある。現時点での実用という面では、アニーリング型が先んじている。量子現象を実際に利用したマシンの他にも、先端半導体技術によって擬似的に量子アニーリングの仕組みを実現したマシンも盛んになっている。一方のゲート型の方は、まだまだ実用化には至っていないが、研究開発と応用の試行はますます加速していることは間違いない。先の国際会議Q2B22報告にも書いた通りである。近い将来、これに追随していくためにも、上で述べたような量子に関する基本知識の修得は不可欠のように思えるのだ。

 「夏休み」という響き、ああ、古き良き学生時代...

2022年7月19日火曜日

MIT App Inventor Appathon 2022のテーマが決定

 今年も、MIT App Inventorを活用したアプリケーションハッカソン、Summer Appathon 2022が世界規模で開催されています。すでに参加申し込みは締め切られており、本日(2022-07-18)そのテーマが発表されました。開発期間は、7/18〜7/30です。

 今年のテーマは、あの有名なSDGs(持続可能な開発目標)17項目から、下図太枠の5件です。お洒落でもあり、誰もが取り組みやすい、goodな設定ですね。応募者の皆さんは、どんなコンセプトでどんなアプリを作り上げるのでしょうか、とても楽しみです。

  4. 質の高い教育をみんなに   
11. 住み続けられるまちづくりを
14. 海の豊かさを守ろう
15. 陸の豊かさを守ろう
16. 平和と公正をすべての人に

詳細はこちらをご覧下さい:
https://appathon.appinventor.mit.edu
https://appathon.appinventor.mit.edu/themes


2022年7月16日土曜日

量子コンピューティング国際会議Q2B22 Tokyo参加レポート(続)

 先のレポートの続編です。一晩明けて、印象に残った講演がまだいくつかあったことを思い出し、簡単にですが追加します。

--- Quantumの夢を最も語っていた講演!---
Quantum Transformation – The challenge of quantum application development from underground to outer space
地中から宇宙まで、量子で未来を創る挑戦:寺部雅能(住友商事株式会社 QXプロジェクト代表)
 DX(デジタルtransformation)ならぬQX(量子Transformation)を生き生きと語っていたこの講演も印象に残った。圧巻は、「ハノイ市北部スマートシティ開発に向けた日本コンソーシアム」である。住友商事が主体で日本企業数社が進めている、スマートで成長し続け都市の計画である。50年に渡り開発、成長し続けるわけだから、現状のコンピュータやデジタルを前提にすることはできない。量子コンピューティングを社会基盤とした計画を推進するのが自然の成り行きなのである。ああ、Quantum Smart City!
・DX→QX。量子コンピュータは世界を最適化できるか
・Quantum Transformation
・ハノイ市北部スマートシティ開発に向けた日本コンソーシアムの発足について

--- IBM Quantumも素晴らしいが、Amazonも凄い!---
Quantum Computing on AWS and Amazon Braket 
(AWSにおける量子コンピュータの取り組みと Amazon Braket):宇都宮聖子(アマゾン)
 量子コンピューティングサービスの大手として、IBMも素晴らしいが、Amazonもなかなか凄い。AWSの量子コンピュータの取り組みとAmazon Braketについての、同社の宇都宮聖子氏の講演は迫力満点で、AWS Quantumの奥深さを余すところなく伝えていた。AWS独自のquantum processorも持っているが、Braketというフレームワークで、ゲート型のRigetti、IonQ、OQC等のマシンや、アニーリング型のD-Waveなどの量子コンピュータを使うための敷居をうんと下げている。極く最近だが、いわゆる「量子超越」を実現したとされるXanaduのGBSも、Braketから使えるようになったとのことで、これに強い関心を示すシニアエンジニアも多いようだ。また、量子機械学習ライブラリで有名なPennyLaneもBraketで使えることも強調していた。発展はまだまだこれから!
Amazon 宇都宮聖子氏の講演(左側に日本語、右側に英語を投影)
・サービスアップデート Quantum 編:Amazon Braketの基礎
・Amazon BraketでPennyLane を使用する

2022年7月15日金曜日

量子コンピューティング国際会議Q2B22 Tokyo参加レポート

 この会議名Q2Bから連想されるとおり、開催趣旨は、"Toward the practical use of quantum computing". 以下のような講演タイトルは、私を参加へ駆り立てるのに十分でした。(下記を含め合計55件の講演がありました。)
・コヒーレントな量子アニーリング:西森秀稔(東工大特任教授)
・量子コンピュータが導く最適な配送ルート:井手貴範(アイシン)
・量子アニーリングで何ができるのか、自ら検証すべき理由:香月諒大(NTTデータ)
・日立CMOSアニーリングの概要と開発状況:山岡雅直(日立)
・Quantum in the Enterprise:Hossein Sadeghi Esfahani (D-Wave)
・Defining the Quantum Accelerated Supercomputing Platform:Tim Costa (nDIVIA)
・IBM Quantum:Stefan Erlington (IBM Quantum)
・Quantum Computing on AWS and Amazon Braket:宇都宮聖子(Amazon Web Service)
・Theoretical Foundations of Quantum Advantage:Francois Le Gall(名大教授) 

東京での開催となった実用量子計算国際会議Q2B22
 量子コンピューティングの(製造、素材、自動車、金融等々での)実用を議論する国際会議Q2B-Practical Quantum Computingは、2017年から米国で毎年開催されてきた。6回目を迎えた今年は日本での対面開催(The Westin Tokyo, July 13-14, 2022, Exclusively In-Person, Co-hosted by QCWARE & Qunasys)となった。2日間の会議において、この業界を代表する日米欧の研究者、ユーザー企業、行政機関、量子ベンダから55件の講演があった。小生は、量子コンピューティング(特に量子アニーリング)が、企業などでどのように実用されているのか、そしてその課題は何かを直に知る絶好の機会ととらえて参加した。また、IBM Qurantum、Amazon Braket等、ゲート型量子コンピュータの動向についても高い関心を持って臨んだ。
 海外のホテルでの国際会議では普通だが、早朝(8時台)からの開始となった。スポンサーとして、IBM 、D-Wave、nDIVIA等有名どころが名を連ねているためか、参加費は比較的低額に抑えられた。参加者は約1,000名という盛況であった。
 以下に、小生が特に関心を持った幾つかの講演について簡単に記す。この会議では、講演名と講演者のリストがWebの載っているだけで、アブストラクトも予稿も全く掲載されていない。ただ、会場での講演スライドのスマホによる撮影は許容されたので、それも活用し、メモをとりながら聴いていた。
 ある程度詳細にレポートしようかと思ったが、著作権上の問題があるかも知れないので(ファスト映画みたいなことにはならぬだろうが)、タイトルと極く短いコメントに留める。(本記事よりも3倍くらい詳しいレポートも作成してあります。もしも、ご入用であればご連絡ください。)

Welcome to Q2B22 Tokyo -----
 この会議のホストの一つである先進企業QunaSysのTennin Yan(CEO)の挨拶。非常に有益な考察が示されていて感心した。以下のような項目に関してである。
(1)A lesson from classic computer history:2021年12月に東大にIBM Quantum System One実機が導入され話題となった。日本で気象予報のために最初に(1959年)導入されたコンピュータも下図のIBM704マシンだった。当時は、周辺システムもなく、誰がどんな計算をいつ行うか、そのスケジュールも全て、紙と鉛筆によっていた。しかし、そこから、利用のノウハウが蓄積され、そこで仕事をしたり遊んだりしていた人々が羽ばたいて技術を広め発展した。量子コンピュータの場合も、古典コンピュータの黎明期のように、実機を利用することでユースケースを増やし、ノウハウを蓄積して発展して行くのではないか。(2)Impact of real quantum device、(3)Learning from industrial revolution

コヒーレントな量子アニーリング:西森秀稔教授(東工大)
 西森教授は、世界で初めて量子アニーリングを提案した物理系学者。現在の量子コンピュータNISQ(Noisy Intermediate-Scale Quantum Computer)は、ノイズ等の問題により、このままでは、「量子の死の谷」(Quantum Chasm)に陥ることが懸念されるとのこと。それをなんとか盛り上げて、誤り耐性量子コンピュータへ発展させるべく、研究開発を進めなければならない。さらに、量子アニーリングの目的、現在の量子アニーリングマシン(D-Wave)の課題と解決の方向(の一つ)、量子アニーリングの基礎研究の急速な発展に関する見解が述べられた。

富士通における量子コンピューティングへの取り組み:佐藤信太郎(同社量子研究所長)
(1)量子ゲート方式の現状と課題、(2)デジタルアニーラを量子インスパイアード技術として先行的に推進、(3)進展中の応用などに関する説明。

InQuanto - A Quantum Computational Chemistry Platform :山本憲太郎(Quantinuum)
 量子化学計算による新材料の開発は、いろいろ適用分野がある中で、最も注目されるものの一つだろう。このQuantinuum社以外にも、三菱ケミカル、JSR Corp.、QunaSys、京都大学などからも、古典的量子化学計算と量子コンピューティングの融合に関して発表があり、注目分野であることを強く認識させられた。

量子コンピュータが導く最適な配送ルート:井手貴範(アイシン)
 物流をテーマに量子コンピュータアプリ(特に量子アニーリング)を紹介した。多数の仕入れ先、数は少ない物流センター、多数の工場、多数の顧客先を結ぶトラックの最適ルートを計画することである。トータルコスを最適化する最適な配送ルート、最適なトラック台数を求める。実例での量子アニーリングの効果が示された。

Evaluating the Potential of Quantum Annealing for your Business Apps:香月諒大(NTTデータ)
 「スポーツの開催スケジューリング」が示された。サッカー試合を、どの開催地でどの組み合わせで、いつ行うかはかなり複雑な問題となる。これを目的関数と制約条件に落とし込む。当然、興行収益を最大化するためだ。D-Waveで極く短時間で適切な解が得られた。

感想
「習うより、慣れろ」というのがある。小生からかなり遠い分野であっても、たくさん聴いているうちに、だんだん「分かった」「判った」「解った」気になってくるから不思議である。小生は、まだ、量子アニーリングの初歩的な応用に取り組んでいるに過ぎないが、今回の参加をきっかけに、シュレーディンガー方程式の(あまり深いレベルではなく)基礎から復習して、ゲート型量子コンピュータの動作原理を把握した上で、IBM QuantumやAmazon Braketなどの環境を次第に深く利用して行こうという気になった。
 以前、小生のブログに、「量子コンピュータは商用化されているが、実用化されているとは言えない」などと勝手なことを書いた。ある面ではそれは間違いではないだろう。しかし、今回、2日間で55件の講演の約6割を実際に会場で聴いてみて、理解がだいぶ深まった気がしている。「実用化されていない」ではなく、「実用化に向けた試行や工夫がまさに盛んに行われており、急速にそのインパクトを与えつつある」と訂正したい。そして、その波は、産業界のみならず、大学のような教育研究機関へも遠くない将来、必ず押し寄せる。量子コンピュータ従事者が、現在のコンピュータのことを勝手に「古典コンピュータ」と呼んでいることもそれを示唆するように思われる。

続編このレポートを書いた翌日に、印象に残った講演がまだ他にあったことを思い出し、こちらに追記しました。

2022年7月6日水曜日

IBM Quantumで量子機械学習(MLBの5,000投球)を試す

 量子コンピュータのうち、今回はゲート型の代表格であるIBM Quantumマシンを用いて、「MLB投球5,000球のストライク/ボール判定」の量子機械学習を試してみました。

量子-古典ハイブリッドによる機械学習
 量子コンピュータで機械学習させる方式は種々あるようですが、ここでは、従来のニューラルネットワークによる機械学習の核心部(誤差逆伝搬法を含む)を量子回路で置き換えた量子機械学習を試します。

量子機械学習は非常に複雑
 一般にゲート型量子コンピュータは、現在、「商用化」はされているが「実用化」されているとはとても言えません。量子コンピュータをうまく利用するためのアルゴリズムやプログラミング手法はまだまだ開発途上にあるといえるでしょう。量子機械学習も同じく、研究は盛んになっているが、現状では、古典(従来)コンピュータと量子コンピュータの計算ルールの関係を理解したうえで相互接続が必要です。さらに、解くべき問題に対応する量子回路も明示的に書く必要があり、一般技術者にとって敷居は高いと言えましょう。

量子機械学習ライブラリPennyLane(by Xanadu)
 そのような状況において、Xanadu社が公開しているPennyLane(ビートルズの楽曲にちなんだ名前か否かは不明ですが)という量子機械学習ライブラリが注目されています。このライブラリを使う場合でも、古典ビットを量子状態に符号化することや、量子回路をCNOTゲートやY回転ゲートを適用して実装することなどが必要です。しかしながら、機械学習全体の枠組みは、従来のTensorflow/Kerasに近いものがあり、ちょっと安堵できました。
 また、優れた特徴なのですが、構成した量子回路を実行するデバイスとして、IBM Quantum用のシミュレータと実機を簡単に切り替えることが可能です。シミュレータは直ぐに実行開始されるが実行速度はとても遅い。逆に、実機は高速だが、実行されるまでの待ちが非常に長い(ただし無料枠利用の場合)という状況です。

MLB(大リーグ)5,000投球に対する量子機械学習
 以前、従来コンピュータでの深層学習例題として、MLB主審によるストライク/ボール判定の学習を実施しました。今回は、そのデータを若干変更して用います。投球(全5,000球=ストライク2,500球 + ボール2,500球)の判定結果は図1のとおりです。また、一球ごとのデータは、図2の通り、5項目から成っています。最後の項はストライク(+1)、ボール(-1)のラベルです。



 そして、必要な量子回路の設定は、(小生が十分に理解できていないこともあり)PennyLaneの公開デモで示されているある量子回路に準拠しました。(量子回路の実装の詳細については、ここには書けません。近々、別記事の中で理解した内容を書いて行くつもりです。)

 入力データを示す図3は、図1と同一内容ですが、量子機械学習向けに特別な正規化(スケーリング)を施したものです。赤と黒のドットは投球のxy座標に対応しています。

 入力データ全5,000球のうち、通例通り、75%を訓練用(train)、残り25%を検証用(validation)とし、60回(60 epochs相当)学習を繰り返した結果は図4、図5の通りです。図4は、各validation用データに対する正解/不正解を可視化しています。
 また、図5に示すとおり、検証用データについての正解率は約76%でした。あまり高くないようにも思えますが、図1や図3から分かるとおり、ストライクゾーン(打者により上限と下限が変動)の周辺では、ストライク/ボールが入り混じっていることを考えれば、おおむね妥当な学習結果といえるでしょう。さらに、幾つかのハイパーパラメータの調整でもう少し正解率は上がるかも知れません。

感想
 小生にとって、現時点では量子コンピュータの高速性は問題ではありません。従来と全く異なる量子コンピュータというマシンで、機械学習を実際に動かし結果を得られたという体験こそが大事なのです。これをきっかけに、量子コンピュータの仕組みにも少しづつ入って行けそうな気がしてきます。そして、量子アルゴリズムや量子機械学習用のソフトウェアのさらなる発展を期待する気持ちが高まったことをよしとしたい。