2018年9月17日月曜日

Javaは無かったが、特異値分解はあった

 現在では、分からない用語やあやふやな事項を調べるのに、webは欠かせません。手っ取り早く、Wikiペディアを利用する人も多いようです。しかし、今から20年〜30年前は、紙の書籍や辞典が重要な位置を占めていました。(今でもその事は失われていないと思います。)情報科学の分野では、当時の日本の研究者の英知を結集して編纂された岩波の情報科学事典(1990年)が有名でした。

1990年5月発行(全1171頁、今では珍しいしおり紐2本付き、定価7000円)
 今やAI(人工知能)の全盛期。しかし、それはこの辞典に載っているような知識や技術の上に築かれているにちがいない。最近、Deep Learningのうちの自然言語処理を学んでいて、単語に関する共起行列、PPMI行列がでてきた。その次元削減のために行列の特異値分解(Singular Value Decomposition)が重要な役割を果たしている、と。この特異値分解、大学で学んだはずだが、その後ご無沙汰していて、今となっては曖昧な記憶しか残っていない。そこで、それをこの辞典で引いてみました。情報科学の重要な事項として記載されていたその内容は、簡潔で的確であり、(とりあえず)自分を納得させました。具体的な計算法などは、必要に応じて、さらに別の数学書で調べればよいのです。(どの環境でも特異値分解ライブラリは用意されているので、その必要はないかも知れないが。)

 ところで、1990年と言えば、まだJava言語は世の中にでていなかった。Java 1.0のリリースは1996年のはずですから。念のため、この辞書を引いてみましたが、やはり何も出ていません。実用プログラム言語の「用語の木」のノードには、Fortran、Cobol、Algol60、Algol68、PL/1、Pascal、C、C++、Lisp、Prolog、Smalltalk等々の懐かしい言語ばかりが並んでいました。

 情報科学の進歩は著しい。もしも、この辞書の改訂版が出るとすれば、Javaも当然、掲載されるでしょう。「特異値分解」も脱落することは無いだろう。その他の普遍的な知識や技術も同様に永遠であろう。ただし、その後の新興技術の進展は質的にも量的にも半端じゃないので、辞典の改訂には想像を絶するエネルギーを要するであろう。

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