2023年8月12日土曜日

ChatGPTと並んで載った「圏論」

 ChatGPTの喧騒の中、静謐に数学の基礎論に浸る、それは理想の生活である。

 いきなりだが、今から50年以上前に私が学んだ数学には、圏論(Category Theory)は全く出てこなかった。(私がよく学んだ)集合論では捉えきれない数学の深淵な世界を(という言い方が妥当かどうかも分からないが)切り拓く理論として、現代の数学者の間では既に常識となっているようだ。これまで、一般ソフトウェア技術者などには程遠い存在と思われていたが、最近、情勢は少しづつ変わってきたようだ。

 下図の日経サイエンス(2023年5月号)の表紙には、ChatGPTと並んで「圏論の世界」という記事のタイトルが大きく出ている!他にも、Web上や書籍に関連したものが増えてきた。
 単に、数学者の間の話ではなく、計算機科学や量子物理との関連を扱った書籍も出版されているのである。例えば、”Categories for Quantum Theory”、"圏論による量子計算のモデルと論理"、"圏論的量子力学"などのタイトルがある。だが、すぐにそれに飛びつくことはできないだろう。私には、もっとやさしく基礎的な書籍が必要である。しかし、ふあっ〜とした漫画のような解説ではなく、数学的に論理がしっかり書かれていて勉強できそうな本が欲しい。色々調べて、以下の2冊を購入した。
 一冊目は、斉藤毅著「抽象数学の手ざわり」である。サブタイトルは、"ピタゴラスの定理から圏論まで"となっていて、集合と構造(素因数分解)、圏(対象と射)、関手(ガロア理論)の "こころ" を掴めそうな内容になっている。これに馴染んだら、次の二冊目へ行くのが良いのではないか。
 二冊目は、この世界では著名な、もっとも基礎的な洋書テキストらしい。Tom Leinster著「Basic Category Theory」である。Cambridge studies in advanced mathematicsのシリーズとして出版されている。一見すると、厳密な抽象数学の形式で書かれているのだが、教育的配慮が行き届いており、一冊目で馴染んだ後は、なんとかついて行ける雰囲気がある。これを読破した後には、圏論の世界の入り口に立つことができるだろう。

 ChatGPTの喧騒の中、静謐に数学の基礎論に浸るのも良いだろう。もちろん、それは高い理想的な生活であり、実践は容易ではない。

0 件のコメント:

コメントを投稿